こんにちは。
地域で活躍しているママたちと「とも育て」を考える「とも育てプロジェクト」のナビゲーターの大井美深です。
とも育てプロジェクトインタビュー第2回目はバセドウ病体験者でベビーマッサージ講師の中前里礼さん(以外、里礼さん)です。
現在、ベビーマッサージ講師として活躍している里礼さんはバセドウ病の体験者。この病気がどのようにライフスタイルに影響するか、妊孕性と出産、子育ての考え方などリアルな体験談を教えていただきました。
——里礼さんは、第1子と2子をコロナ禍に出産。第2子が2か月の頃にベビーマッサージの講師資格を取得していますが、きっかけは何かありましたか?
もともと健康に関しては興味があったのでベビーマッサージは気になっていましたが、第1子は、まさに新型コロナウイルス感染拡大真っ只中で、妊婦向けイベント、子育てセミナーなど全くない状態でした。ベビーマッサージのイベントももちろんなし。第2子は2022年出産だったので、リアルイベントなども少しずつ戻ってきている時期でした。
2人目を出産後、上の子(当時3歳)に向き合う時間を使っていて、生後2ヶ月の娘との時間がないことに気付いたんです。何かやってあげたいなと思った時に「ベビーマッサージ」はちょうど良いと思いました。生後2ヶ月の子にぴったりかなと。
学ぶことも楽しく、やりがいを見つけた感覚がありました。
何より、定期的に身体に触れていると、いつもと違う変化にも気付けますしとても気に入っています。
――里礼さんがこだわっている「身体の変化に気付く」ですが、自身のバセドウ病の経験が影響していると見受けられました。
病気体験の影響は大きいことに子供を産んで気付きました。
私は、高校1年生の時にバセドウ病発症して、病院に行った時には、「なんで、こんなになるまで放置したんですか!死にますよ!」と言われました。
病院に行ったきっかけは、母が異変に気付いたからです。私自身はわかりませんでした。
―――症状でどこかの不調などはなかったんですか?
高校でずっと寝ていました。
この年頃って眠いものなんだなと感じていました。
あとは、友達から「目が落ちそうだよ(眼球が飛び出してる)」と言われても、「落ちないよー(笑)」など。
今思えば、異変は顕著だし、、見た目もバセドウ病の代表的な症状ですよね。
―――最近は、病名が有名になりましたけれど、里礼さんが高校生のときはまだ知られてなかったですよね。たしかに、高校生は不調があっても周りの大人が気付かないと自ら率先して病院に行かないと思います。
バセドウ病という言葉自体、私も母も知らなかったので、いつもぼーっとしていたことから、母は受け答えがおかしい私をアルツハイマーと思って病院に行ったようです。
病名がわかってからは投薬治療、22歳で手術して甲状腺を全摘しました。
「(子供の)身体の変化に気付く」にこだわっているのはこの体験が影響しています。母が気付かなかったらどうなっていたことか。
ただ、それと同時に、もっと早期発見できていたらという気持ちもあるんです。どんな病気になるか、いつ起こるかなんてわからない。専門職ではないので医療知識を万全に持っておくことも難しい。そうだとしたら、触れて・見て変化に気付く。これが我が子の健康を守る自分ができることだと思っています。
——たしかに、いつもと違うに気付けるのは子育てに心強い武器ですね。
バセドウ病は妊娠や出産にも影響する病気だと思うのですが、当時心配はありましたか?
高校生だったので、はじめはあまりピンときませんでした。手術が22歳だったので結婚を意識した時期だったので、それなりに辛さはありました。
妊孕性では薬に関することが印象的な思い出です。
はじめに通っていた近所の病院で、薬を1日8錠処方されて、飲んでいました。
数年後、甲状腺専門医を受診したら「こんなに飲んでいるのはあり得ない!」「この量を飲んでいたら妊娠はできないよ!」と言われたんです。
8錠の薬、毎日は、専門知識ゼロな私ですら、疑問がありました。でも、相談する人も主治医師以外おらず、真面目に毎日飲んでいたので…転院先の病院で言われた時は衝撃的でしたね。専門医の重要性を感じました。
——薬の副作用などの説明はなかったんですか?
薬の服用中は、奇形児のリスクから妊娠厳禁なことは言われていました。
ただ、薬を辞めたら妊娠はできると思っていました。
説明不足もあった、私の質問不足もあった。医療のことは本当に、難しいですね。
——結婚の時に相手とは話し合いましたか?
「私、子供できないと言われているけどいいの?!」は聞きました。夫は、特に問題視しておらず、そのまま結婚。2人での生活を楽しんでいました。
保育士になりたかったぐらい子供好きで、3人ほしい!と夢見ていたので、犬を3匹飼いました。
なので、いま、子供2人に犬3匹。
——1歳、3歳、犬3匹…けっこうハードな環境ですね笑
ですね笑
バセドウ病の方で、医師に「子供はできないかも」と言われても、「かも」で、絶対ではないこと。私みたいな場合があることも知ってもらえたら嬉しいです。
妊娠できないという言葉はどのライフステージでも、苦しくなる人は多いと思いますから。ちょっとでも希望の事例になればうれしいです。
——今はバセドウ病の病名認知が上がっていますが、具体的にどんなものかと聞かれると答えられる人は少ないと思います。ライフステージにどう影響を及ぼすかも体験者の話を聞かないと想像できません。
実際に、出産よりバセドウ病の手術後1ヶ月の方がキツかったです。声は出ないし、横になれないので寝られないし…
甲状腺を全摘した今も薬を飲んでいます。妊娠した時は薬の量を調整してもらったり、産院の指定もありどこでも産めるわけではない。再度、妊娠を望むときも薬の調整があるので医師に相談が必要です。
バセドウ病に関して、私の場合は自分自身に悲観はしてないのですが、第一子を出産した後、検査のため、生まれたばかりの子供に機械の管が付けられていて…それは悲しかったです。私のせいで…と申し訳ない気持ちもありました。
正直、機械や管をつけたまま抱っこしている時に、周りの目も気になりましたね。
——たしかに、何も聞いてなくて、わが子が管につながれている状態で登場すると辛いですね。検査のため機械付けますね、など、はじめに声がけあればよかったですね。
そうですね。それもバセドウ病の人が妊娠出産したら…などライフステージごとの情報がもっとあればいいのかもしれません。
私は診断されたときに体験談など全くなかったので、母が不安になって少し過保護気味になっていました。今ならその気持ちもわかるかも。子供のことって自分のことより心配になるものですから。
——今後、子育て関連でやりたいことや夢はありますか?
子供たちが小学生になったときに、お帰り!と出迎えができるライフワークバランスに憧れがあります。やはり子供が好きなので、子供に関わる仕事にも興味があります。
今はベビーマッサージ講師が中心ですが、今回のインタビューのように10代の時からのバセドウ病の自分の体験を話すことで、誰かが救われると嬉しいなと思っていますので、情報配信もしていきたいです。
若い世代のバセドウ病について、本人サポートもですが、その子の親にも伝えたいことがあります。
実際に私の母は病院に連れて行くときに「病気が宣告されることが恐かった」と言っていましたし、診断後もいろいろ気にしていたので、本人以上につらい心境の親もいるのではないでしょうか。
バセドウ病は確かに投薬や手術も必要かもしれない、将来子供を持つことが難しいかもしれない。でも私のような場合もあります。
症状で大切な若い時間を無駄にしてほしくないと思います。周りの大人たちが症状に気が付いて専門医に行き早期発見と的確な治療をしてほしいです。
―――ところで、旦那さんが朝早いお仕事のためワンオペ育児&3匹の世話をしている里礼さんにとって、「とも育て」について、どう思いますか?
私の住んでいるマンションは、昔からの住民が多く、マンションなのに、近所付き合いがあるんです。しかも、入居者は70代以上の方がほとんど。あまり若い世帯がいないマンションなので、子供達がいると明るくなったと喜んでくれています。
何かあったらいつでも預かるよ!と声かけてもらったり、保育園まで一緒に歩いたり、隣の部屋のおばあさんとは、この前、回転寿司に一緒に行きました。1歳、3歳の子供たちと隣の部屋のおばあさん…不思議な組み合わせですよね。楽しい時間を過ごせました。
子育て世代だけが、助かるだけではなく、子供に関わりたい高齢者も楽しめる。そんな「とも育て」が広まればいいと思います。
里礼さん宅の子供と近所に覚えてもらえることは、何かあったときに安心にも繋がります。これからもご近所の上の世代と仲良く、子育てしていきたいと思います。
―――まさに、とも育てを体現しているような…モデルにしたいマンションご近所付き合いですね。里礼さん、貴重なお話ありがとうございました!
取材・文:大井美深(おおいみゆき)
大学院で機能性食品素材の研究を経て、医療・ヘルスケア分野で情報サイトの企画・運用、広報業務を担当する。記念日を利用した公募企画、乳がん・子宮頸がんなどの患者支援団体との協力実績多数。エンターテインメントとヘルスケア情報配信のコラボレーションなどを得意とし、ヘルスリテラシーの向上に貢献する活動を幅広く行う。
編集:JFPAチャンネル事務局